良かったのか悪かったのか・・・
大雨で思い出した話しです。
昔々の3月の某土曜日で朝から雨、年度末の多忙で私と営業の課長の2名が
休日出勤で仕事をしていました。
休みの日なのでスーツではなく、完全に普段着です。
2人ともそれぞれの仕事を進めていた午前10時ごろ、1本の電話が着信!
「ハイ!〇〇社です。」
電話の相手は「××町役場です!助けて下さーい!」
因みに当時、会社からその役場まで片道およそ180km、高速道路は途中まで
しかありません。
事情を聞くと、雨水排水用のポンプが運転不能で、田畑や道路が水没しつつ
あると・・・
事務所で1日中書類を作る予定の自分は、免許証を家に置いてきていました。
営業課長はカバンの中をゴソゴソ探し、「あった!」ということで、2人で
車に乗って課長の運転で出発!
しかし、大雨で高速道路は80km/h規制、しかも課長はきっちり80km/hで走行
します。
「いくらなんでもキッチリ80?」と訊くと、「いや・・・実は点数があと
1点しかない・・・」と課長(バカだ)
途中で食事をする事もなく、およそ4時間かけて役場へ到着すると、電話を
くれた担当者は役場の2回から双眼鏡で外の様子を伺っていました。
私が後ろから「〇〇社です」と声をかけると、泣きそうな顔になった担当者
の姿が忘れられません。
直ぐに一緒に現場へ行き、確認したところ、2つの原因が直ぐに分り、また
対応も短時間でできる内容だったので、2人で30分もかからずに処置して
ポンプを稼動させました。
しかし、稼動したからといって直ぐにさようならしないところが良いところ
暫く役場の人と3人で様子を見ていると、ポンプ場の脇の道路を傘をさして
自転車で通りかかったおじさんが、じっとこちらを見ています。
それに気付いた役場の担当者が一言「あっ、町長!」
走って行った担当者がなにやら説明すると、町長はこちらに向かってきて、
「説明してください」と・・・
仕方ないので一通り説明すると、「オーバーホールの見積りを出してください」
と依頼を受けましたので、見積りのための点検作業を行いました。
それから暫く、遊水地を見ながら町長と一緒に煙草を吸い、水位が下がるのを
確認していると、遊水地の対岸にもう一つのポンプ場があります。
が、運転している気配がありません。
町長は担当者に「あのポンプ場は?」と訪ねると、「□□社さんですが、電話
しても出ません」との答えに「緊急連絡先は?」と問う町長、「そこもダメです 」
と担当者・・・
私たちの目の前で「□□社は今後指名から外せ」と指示がでました。
「指名停止ですか?」という担当者の問いに「指名停止じゃない、指名するな
と言う事」と町長
「指名停止」は処分のため、正当な理由が必要で、且つ期限がありますが、
ただ「指名しない」のは理由も不要で無期限なので、指名停止より性質が
悪いです。
そんな話をしていると、一人の農家のおじさんが両手に菓子パンと缶コーヒーを
たくさん抱えて来ました。
「あの・・・これ、どうぞ・・・」と
そして、町長に気付き「あ、町長自ら?」と(町長は株を上げました)
役場の担当者が「どうしましたか?」と訊いたら、「ポンプ場の排気管から
排ガスが出たので、ポンプが動いたと思って嬉しかった」と涙を流しています。
聞けばその農家の方は、周囲で西瓜を栽培しており、苗を植えたばかりの畑が
浸水したら収入がなくなっていたとのことでした。
町長が「4時間もかけて来て貰ったので、帰りも4時間かかるでしょう?全部
こちらの2人に」と言うと、担当者は「そう言えばお昼どうしました?」と
聞いて来たので、「そう言えば食べてませんねwww」で皆さんに見送られて
帰路につきました。
車中で菓子パンとコーヒーを頂きながら・・・
また雨の高速を時速80km/hでゆっくり帰って来て、インターへの分岐まであと百
メートル位の所で、急に車から「ブロロロロ」という異音が聞こえてきました。
料金所のゲートをくぐる前の道路公団(当時)の建物の前に車を止めて確認
すると、左前タイヤのパンク・・・
高速走行してきたタイヤが雨に濡れて湯気が出ている最中、ジャッキアップして
アッチッチと言いがらタイヤ交換を済ませ、事務所へ帰って来たのが20時過ぎ
冷蔵庫を開けると、未開封の一升瓶があったので、「これ以上何かあったら
嫌だから」とお清めして帰ることになり、中身が空っぽになった時に気がつくと
22時を過ぎておりました。
当然、日曜日は土曜日にやるはずだった仕事のために、また2人で休日出勤
でした。
それから10日後、ポンプ場のオーバーホールの見積書を持って電車で伺うと、
見積書を受け取った課長がどこかへ内線電話をかけました。
そして、帰り際に「〇〇さん!町長が部屋に来てくれって!」と一言・・・
恐る恐る伺い、先日のお詫びとお礼を申し上げると、コーヒーを用意してください
ましたので、町長室のソファーでご馳走になってきました。
翌年度、ポンプ場の整備も無事完了!ですが、巨大なポンプを分解した時には
町長自ら現場へ来て、感心しながら見ていたそうです。
それから2年後、会社は町役場とは全く違う客先からの発注で、1ヶ月以上役場近く
のトンネルで夜間工事をしていたのですが、工事看板に書かれた会社名に気付いた
町長さんが、夕方の帰宅途中に現場事務所を訪れて、地元の銘菓を差し入れて
くださったそうです。
大雨の時の経緯を知らない現場責任者が、慌てて電話してきました。
「町長が陣中見舞いだと菓子折り持って来たけど、どうなっての?」
後日、支店長と二人で町長の下へお礼に伺ったので、こんなことも
却ってどうかと思います。
でも、結局仕事って人ですよね?
因みにこの日車を運転した課長、免許については後日談があります。
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